記念すべき第1回目の書評は、僕が尊敬している公認会計士の先輩である武田雄治先生の本、『「経理」の本文』です。僕自身大変参考になった本であり、経理職に従事している方にはぜひとも読んで欲しいと思い、第1回目の書評に取り上げました。
本書では、主に上場企業の経理部員を読者として想定し、上場企業の経理部員が知っておくべき経理部の本分・存在意義、上場企業特有の業務内容、経理部員としての心得を述べていますが、非上場企業の経理部員や会計事務所等勤務の方、監査法人で監査業務に従事する方にとっても有益な情報が盛りだくさんですので、本記事で少しでも興味をもってくれたらぜひ読んでみてください。定価2,300円(税抜)と少し高めの値段設定ですが、その何倍の価値のある情報が詰まっている本でした。
本記事では、本書の概要と僕自身参考になった点を3つほど取り上げて、解説していきます。
こんな方におすすめ
・経理職に従事していて、自分達の仕事が何のためにあるのか、どうあるべきか知りたい方
・経理職や会計事務所等に勤務していて、日々の業務の正確性や効率性の上げるヒントを得たい方
・監査業務に従事していて、経理部の方がどのようなことを考えているのか知りたい方
【著者紹介】
著者は公認会計士試験合格後、新日本監査法人、あずさ監査法人に入所し、監査業務に従事。その後、監査を受ける側の立場である上場企業財務経理部に勤務、コンサルティング会社勤務などを経て、現在は独立し、「経理を変えれば会社は変わる!」を信念に、会計・経営コンサルティングを行っている方です。IFRS導入や決算早期化、決算業務改善の分野での第一人者です。
このような経歴を持っている方であり、監査をする側、される側の両方の経験を積まれ、独立後は会計・経営コンサルティングを通じて経理部に深く関わっているので、経理実務を知り尽くしているのでその知見は大変参考になるかと思います。
【『「経理」の本文』概要】
本書は以下の章で構成されています。
第1章 経理部の本文と存在意義-「真の経理部」とは何か
第2章 経理部の仕組み-経理部の6つの業務
第3章 経理部の日常業務とは-日常的に経理部員は何をすべきか
第4章 経理部の決算業務とは-ディスクロージャーのために経理部員は何をすべきか
第5章 経理部のサポート業務とは-経営をサポートし、企業価値高めるために経理部は何をすべきか
第6章 自己の価値を向上させる経理部員の心得-自分が変われば会社は変わる
第1章において「経理部の本文は、日常業務を通して「財産保全」(会社の財産を守ること)をし、決算業務を通して利害関係者が要求する情報をタイムリーに提供する「ディスクロージャー」(情報を提供・報告すること)をすることである」と経理部の本文を定義したうえで、実際の多くの経理部ではその意識が薄く、「日常業務として月に何千枚という仕訳伝票を入力したり、決算業務として決算書のひな型に数値を当てはめる作業をしたりと、機械的・形式的な仕事に終始している人も多い」と指摘する。そしてこのような仕事の仕方をしているからAIに仕事を奪われると言われてしまうのであると。しかし、経理部本来の仕事は「AIに簡単に奪われない「思考」(考えること)を必要とする仕事である」
とし、あるべき「真の経理部」とは、経営者等の意思決定をサポートする情報をタイムリーに伝える「情報サービス業」なのであるから、AIに仕事を奪われることはないと述べる。第2章以降は、経理部のやるべき仕事を具体的に説明していくといった具合である。実際にどのように実務に落とし込んでいけばよいか気になった方はぜひ本書を読んでみてほしい。
【僕自身の本書を読んでの参考になったこと】
本書を読んで僕自身が参考になったこととしては、以下の3点がありました。
1.AIに仕事が奪われる仕事もあるが、経理部(=経理・会計・税務)の仕事を経営者等へのサービス業と捉えて仕事をしていけば、AI化の流れを過度に恐れる必要はない
2.財務分析において、ビジネス「実態」と「数字」への好奇心・関心が重要である
3.第6章・心得18「ビジネスアワー以外の時間の使い方で人生は変わる」
1.AIに仕事が奪われる仕事もあるが、経理部(=経理・会計・税務)の仕事を経営者等へのサービス業と捉えて仕事をしていけば、AI化の流れを過度に恐れる必要はない
→僕自身、AIにより公認会計士や税理士、経理の仕事が奪われ、いずれなくなるという話を耳にして、不安になったこともありもしましたが、改めてAIにより代替される仕事はあるけど、会計・税務・経理の仕事は完全にはなくならない、むしろより付加価値を生む仕事にシフトしていくだろうといった気持ちが強くなりました。
2.財務分析において、ビジネス「実態」と「数字」への好奇心・関心が重要である
→クライアントの会計データや経理アウトソーシングで受けた会計データをレビューするときに、ただ数字が証憑と正しいかという視点を重視し、ビジネスの実態との整合性から正しいかという観点が低かったと感じたので、これからはもっとクライアントのビジネスに興味を持とうと思いました。
3.第6章・心得18「ビジネスアワー以外の時間の使い方で人生は変わる」
昨今、ライフワークバランスという言葉が社会的な流れになってきてはいますし、プライベートの時間を充実させるのはとても大事なことだと思いますが、より良い仕事をする、クライアントへ良いサービスを提供するためには、勤務時間中に一生懸命仕事をするだけでなく、休日の時間ももっと勉強や読書をして、スキルを向上させていく必要があると新ためて思いました。
初めてのブログ記事で拙いところも多かったと思いますが、今回の記事はこれで終わりです。
本当に為になる本でしたので、ぜひ読んでみてください!
また次の記事でお会いしましょう!
それではまた。
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