損益計算書を作成する際、多くの経理担当者や経営者が頭を悩ませるのが「その収益や費用をどの項目に計上すべきか」という点です。特に、損益計算書の表示における本業か本業以外かの区分方法は、企業の収益力を正しく評価するために極めて重要な役割を果たします。
この記事では、営業損益と営業外損益の境界線をどこに引くべきか、その具体的な判断基準や実務上の注意点について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
損益計算書における区分表示が持つ重要な役割
損益計算書は、単に「いくら儲かったか」を示すだけのものではありません。その利益が、企業が本来目的としている活動から得られたものなのか、あるいは付随的な活動から生じたものなのかを区別して表示することが求められます。
この区別を行う最大の理由は、投資家や銀行などの外部ステークホルダーが「この会社は将来も安定して稼ぎ続けることができるか」を判断するためです。本業での利益である営業利益と、それ以外の活動による営業外損益を明確に分けることで、ビジネスモデルの健全性を正しく評価できるようになります。
本業の範囲を決定する定款と事業の実態
損益計算書の表示における本業か本業以外かの区分方法において、もっとも基本的な基準となるのが「定款」の記載内容です。定款にはその企業が営むべき事業目的が記されており、ここに記載された活動から生じる損益は、原則として「本業(営業損益)」に分類されます。
しかし、実務においては定款の記載だけでなく、その活動が反復継続して行われているか、あるいは主たる収益源としての実態があるかどうかも重視されます。例えば、製造業を営む企業が余剰資金で株式投資を行っている場合、定款に投資業の記載がなければ、その配当金や売却益は「本業以外(営業外収益)」として処理するのが一般的です。
営業利益と営業外損益を分ける具体的な判断基準
本業の活動から生じた利益は「営業利益」として計算されます。これは、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いたものです。対して、本業に付随して発生するものの、主要な営業活動とは言えない損益は「営業外損益」に計上されます。
具体的な区分のポイントは以下の通りです。
- 営業利益に含まれるもの:商品の販売代金、サービスの提供対価、店舗の家賃(不動産業の場合)、営業担当者の給与など。
- 営業外損益に含まれるもの:預金の受取利息、借入金の支払利息、為替差損益、有価証券の評価損益など。
このように、企業の「主たる事業目的」に直接関連するかどうかが、区分を決定する大きな判断基準となります。
財務活動による損益が営業外に分類される理由
営業外損益の代表格といえば、利息の支払いや受け取りといった「財務活動」に伴うものです。これらが本業以外の区分とされる理由は、事業そのもののパフォーマンスと、資金調達の仕方を切り離して考える必要があるためです。
例えば、同じ製品を作って同じだけ売っているA社とB社があったとします。A社は自己資金で運営し、B社は多額の借金で運営している場合、B社は利息の支払いが発生します。この利息を営業費用に入れてしまうと、製品を作る能力(本業の力)が同じであるにもかかわらず、B社の営業利益だけが低くなってしまいます。これを防ぎ、純粋な事業の収益力を比較するために、財務的なコストは営業外として扱われます。
経常的な活動と非経常的な活動を区別する視点
損益計算書の区分においてもう一つ重要なのが「経常性」の有無です。営業利益と営業外利益を合計したものは「経常利益」と呼ばれますが、これは「毎期、繰り返し発生することが見込まれる利益」を意味します。
これに対し、災害による損失や、数十年使い続けた本社の土地売却益などは、本業か本業以外かという議論の前に「臨時的・偶発的」なものとして「特別損益」に区分されます。正確な損益計算書を作成するためには、その取引が「ビジネスサイクルの中で日常的に起こるものか」という視点を常に持ち、営業、営業外、特別の3つの階層で適切に仕分けることが不可欠です。
損益計算書の区分は、企業会計原則第二 損益計算書原則(損益計算書の区分)にあるのみですが、こちらの記載は抽象的なため、企業会計原則を踏まえつつ、定款の事業目的の記載と本業ビジネスかどうかの実態を勘案して区分することになるかと思います。
個別の会計基準・会計処理だけでなく、本記事で解説したような財務会計論の会計理論的な考え方を押さえておくと会計専門家としてより向上できるかと思います。
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Appendix(企業会計原則 第二 損益計算書原則)
第二 損益計算書原則
(損益計算書の本質)
- 一 損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。
- A すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
- 前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。(注5)
- B 費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。
- C 費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。
(損益計算書の区分)
- 二 損益計算書には、営業損益計算、経常損益計算及び純損益計算の区分を設けなければならない。
- A 営業損益計算の区分は、当該企業の営業活動から生ずる費用及び収益を記載して、営業利益を計算する。
- 二つ以上の営業を目的とする企業にあっては、その費用及び収益を主要な営業別に区分して記載する。
- B 経常損益計算の区分は、営業損益計算の結果を受けて、利息及び割引料、有価証券売却損益その他営業活動以外の原因から生ずる損益であって特別損益に属しないものを記載し、経常利益を計算する。
- C 純損益計算の区分は、経常損益計算の結果を受けて、前期損益修正額、固定資産売却損益等の特別損益を記載し、当期純利益を計算する。
- D 純損益計算の結果を受けて、前期繰越利益等を記載し、当期未処分利益を計算する。
(営業利益)
- 三 営業損益計算は、一会計期間に属する売上高と売上原価とを記載して売上総利益を計算し、これから販売費及び一般管理費を控除して、営業利益を表示する。
- A 企業が商品等の販売と役務の給付とをともに主たる営業とする場合には、商品等の売上高と役務による営業収益とは、これを区別して記載する。
- B 売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。ただし、長期の未完成請負工事等については、合理的に収益を見積り、これを当期の損益計算に計上することができる。(注6)(注7)
- C 売上原価は、売上高に対応する商品等の仕入原価又は製造原価であって、商業の場合には、期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示し、製造工業の場合には、期首製品たな卸高に当期製品製造原価を加え、これから期末製品たな卸高を控除する形式で表示する。(注8)(注9)(注10)
- D 売上総利益は、売上高から売上原価を控除して表示する。
- 役務の給付を営業とする場合には、営業収益から役務の費用を控除して総利益を表示する。
- E 同一企業の各経営部門の間における商品等の移転によって発生した内部利益は、売上高及び売上原価を算定するに当って除去しなければならない。(注11)
- F 営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して表示する。販売費及び一般管理費は、適当な科目に分類して営業損益計算の区分に記載し、これを売上原価及び期末たな卸高に算入してはならない。ただし、長期の請負工事については、販売費及び一般管理費を適当な比率で請負工事に配分し、売上原価及び期末たな卸高に算入することができる。
(営業外損益)
- 四 営業外損益は、受取利息及び割引料、有価証券売却益等の営業外収益と支払利息及び割引料、有価証券売却損、有価証券評価損等の営業外費用とに区分して表示する。
(経常利益)
- 五 経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、これから営業外費用を控除して表示する。
(特別損益)
- 六 特別損益は、前期損益修正益、固定資産売却益等の特別利益と前期損益修正損、固定資産売却損、災害による損失等の特別損失とに区分して表示する。(注12)
(税引前当期純利益)
- 七 税引前当期純利益は、経常利益に特別利益を加え、これから特別損失を控除して表示する。
(当期純利益)
- 八 当期純利益は、税引前当期純利益から当期の負担に属する法人税額、住民税額等を控除して表示する。(注13)
(当期未処分利益)
- 九 当期未処分利益は、当期純利益に前期繰越利益、一定の目的のために設定した積立金のその目的に従った取崩額、中間配当額、中間配当に伴う利益準備金の積立額等を加減して表示する。
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