税金科目(法人税等)の検証方法について

仕事術

決算手続きにおいて、自社の担当者あるいは顧問税理士が作成した申告書ドラフトやExcelなどの税額計算及び税金仕訳の検証が必要になりますが、税務はその特殊性と専門性の高さからどのような視点を持って、どのようにチェックすれば良いのかわからない方も多いと思います。

この記事では、決算手続きでどのように税金科目を検証すれば良いのかを解説します。

税金科目(法人税等)の検証ステップ

分析においては、まず森を見て、その後に木に入っていく形が良いと思います。
そこで最初に税金関連科目の前期比較での増減を分析していきます。

ステップ①税金科目の勘定科目ごとの増減分析

税金科目の勘定科目ごとに前期末からの当期末にかけて、発生や納付によりどのように勘定科目が動いているのかを把握及び前期末と当期末比較での増減額に合理的な説明できるか分析していきます。

また、前期末比較分析だけでなく、あわせて会社の事業計画との比較も行うとより良いと思います。

なお、税金科目の増減を把握するうえでは、総勘定元帳や仕訳日記帳を追うのだけでなく、法人税申告書別表5(2)も利用できるかと思います。

ステップ②決算書と申告書ドラフトor税額計算資料との整合性チェック

決算書及び税金仕訳と申告書ドラフトor税額計算資料との整合性チェックを実施します。

ステップ③課税所得の計算チェック

ここからは詳細に税金費用の計算を検証するステップに入ります。
法人税等は一部を除き、主に税引後当期純利益(決算時の税額計算では、法人税等の税務調整を行わず税引前当期純利益から調整をする場合もあり)に税務調整を加えた課税所得に税率を乗じて計算されることから、まずは課税所得が適正に計算されているか検証します。

課税所得計算の主な検証方法は以下の通りです。

Ⅰ 当期トピックの把握(当期における新規取引やイレギュラーな事象の発生により税額への影響が見込まれるか)

Ⅱ 修正申告等による追徴税額や還付税額の把握(過年度遡及基準の適用要否や当期税金計算への影響の確認)

Ⅲ 税制改正による前期からの変更点の把握(新規の調整項目、税額控除の変更、税率変更などがあるか)

Ⅳ 税務調整項目の前期比較分析(前期と比較して新規に調整項目が発生しているか、前期にあって当期に調整項目がないものについての理由の把握)

Ⅴ 当期税務調整額のチェック(決算書や補助科目内訳書、調整額の集計・計算資料との突合)

主に課税所得(法人税申告書の別表4)が適正に計算されているかの検証をしますが、一時差異のものは別表5(1)と連動しているため、この段階で別表5(1)もあわせて検証しておくと、後ステップの税効果計算の検証を効率的に実施できます。

ステップ④税額計算チェック

課税所得などの課税標準に、当期適用される適切な税率を乗じているか確認

ステップ⑤税効果計算チェック

次に税効果計算を検証します。
主な検証方法としては下記の通りです。

Ⅰ DTA/DTL計算の検証(一時差異等が網羅的に把握されているか、適切な法定実行税率を乗じているか)

一時差異は基本的に別表5(1)で把握が可能なため、申告書ドラフトとの整合性チェック。
別表5(1)に載っていない未払事業税や繰越欠損金は別途把握し整合性チェック。

法定実効税率は会社の課税ステータスや年度によっても違うため要確認。前期との比較や税制改正による税率変更はないか、税率差異の解消事業年度の法定実効税率を使用しているかなどに注意。

Ⅱ DTAの回収可能性検討(会社分類、スケジューリングなど)

ステップ⑥法定実効税率と法人税等負担率との税率差異分析

法定実効税率と法人税等負担率の税率差異分析を実施します。
この検証過程で税率差異についての合理的な説明ができず、詳細を確認すると税金計算や税効果計算の間違いが見つかることがあります。

税金科目検証に関連するおすすめ本

上記の各ステップを実施していくためには、税金科目(法人税等)に関する知識が必要不可欠なため、それらが不足していると感じている方向けにいくつかおすすめ本を紹介します。

ここがポイント! 決算書の税金科目クイックレビュー(第2版)

今回解説したような税金科目のチェック方法を知りたい方向け

令和6年1月改訂 法人税申告書作成ゼミナール

法人税申告書別表4・5(1)のつながりがわからない方や法人税申告書を読めるようになりたい方向け

令和5年10月改訂 法人税申告書別表4・5ゼミナール

法人税申告書別表4・5(1)のつながりがわからない方や法人税申告書を読めるようになりたい方向け。前の「法人税申告書作成ゼミナール」の続編です。

税効果会計における「税率差異」の実務〈第3版〉

税率差異、税率差異分析を勉強したい方向け

令和5年度版 最新企業会計と法人税申告調整の実務 公認会計士による徹底解説

そもそもどういった取引が税務調整項目になるのかわからない、法人税自体を勉強したい方向け

まとめ

税金科目の検証は難しいですが、理解できてくると面白くなってきます。
頑張って勉強し、正確な決算書を作れるように頑張っていきましょう!

以上



コメント

タイトルとURLをコピーしました